神保町にて。

YOSHINO FUJIMAL

前回の日記で「文藝春秋増刷しろよな」って書いたけど、しましたね。やっぱり。文春が大々的に増刷するなんて、受賞作が掲載されたときぐらいしかないんだけど。それでも芥川賞受賞作がこれほど(セールス的にも)話題になったのは久しぶりなので、出版社としてもしてやったり、ってとこなんだろう。


神保町の書泉ブックセンターに行ったら*1、「増刷分20日入荷」という張り紙があったので、レジで聞いてみると50冊ほど入荷するが問い合わせも多いので予約したほうが確実と言われた。でも取りに来るのも面倒だし、20日になれば増刷分が他の書店にも入荷するはずなのでパスした。
その後、ナナメ前にある三省堂に行ったら1階のメインスペースに大量に陳列してあるのを発見。さらに東京堂書店*2にも積んであった。なーんだ。
書泉の店員、絶対知ってたな…。予約しないで本当によかった。


収録されてる肝心の2作品『蛇にピアス/金原ひとみ』『蹴りたい背中/綿矢りさ』だけど、読みたがってた娘に先に雑誌を貸してあげたらアッと言う間に読み終わってしまった(読むスピードが私よりずっと速い)。
彼女曰く「金原ひとみって、父親が大学教授で、そのゼミに出席したり原稿のチェックまでしてもらってたんだね。実はサラブレッドじゃん。なんかイメージと違う」「綿矢りさは普通の女の子がいかにも頑張ってるって感じ。このふたりってお互いのことどう思ってるんだろ。そっちのほうが興味ある」、さらに一番面白かったのは石原慎太郎の選評だそうだ(笑)。


私も読みました。『蛇にピアス』は刺激的なディテールや痛い描写やを除けば、ストーリー自体はわりとオーソドックス。トレーニングしてるだけあって文章は読みやすいが、スムーズに読めることが物語にとってすべてプラスに作用するとは限らない。セックス描写は退屈だし*3。わざと即物的な書き方をしたのかとも勘繰ってしまうが、それは違うか。
蹴りたい背中』は一つひとつの言葉の選び方に著者の試行錯誤の後が容易に想像できてしまい、そのことが全体のリズムをぎこちなくしてもいる。まぁ、彼女の年齢を考えれば仕方ないが。しかし、読後に印象に残るのは意外にもこちらの作品だった。
受賞するぐらいなのだから、どちらにも将来性や才能はあるんだろうけど、一読者としては選者のような読み方をするわけではないので(当たり前だが)、正直ちょっと物足りなさを感じてしまう。これなら雑誌で十分かな、というのが父娘共通の意見でした。

*1:たんに交差点から一番近くにあったので

*2:神保町で一番好きな書店。落ち着いた店内はゆったりと本が選べるし、トイレもキレイでいつも空いてる

*3:昔、バイトでエロ雑誌の原稿書いていた私にとってはヌル過ぎ(笑