主役登場

歌のタイトル通りの疾風怒濤のオープニングアクトが終了。この後20分ぐらい延々とセッティングが続き、8時近くになった頃に、ようやく今夜の主役Gavinが登場した。
CDジャケの写真や歌の雰囲気からクールで神経質そうなタイプを想像してたのだが、目の前の彼は満面の笑みで、いかにも気さくなアメリカ人青年だ。ジャケ写同様、毛糸のキャップ(FM局にゲスト出演した時も被ってたので、彼にとっては必需品のようだ)を被っていたが、色白で伸びかけの髪もずっと明るい色だった。黄色い声援も結構飛んでいて、気がつくと空いていたフロア後方も8割方埋まってた(ショーケースなので、関係者&招待客らしき人たちが目立つが)。


基本的にはピアノプレイヤーなので、ステージに向かってやや右側に置かれたキーボードが彼の定位置。ロック色の強いナンバーではエレキギターストロークしかしないためか、ピックは使わない)を手に中央のマイクスタンドを使用。さらに乗ってくるとハンドマイクでステージを駆け回る(笑)、という三つのパターンになっている。
サポートメンバーはギター×2、ベース、ドラムの計4人で、見事なぐらい外見もバラバラなのだが、なかでも一番目を引いたのがファンキーな黒人ベーシスト。チョッパーのようなトリッキーなプレイは無難にこなすんだけど、スローなフレーズになると途端に音出しのタイミングがズレるし(ボーカルとユニゾンになるはずなのでかなり目立つ)、指のタッチが雑なので「ぺんっ」みたいなヘンテコな音を出す有様。アコギ&コーラス担当のリーダーらしき人物(彼のプレイは素晴らしかった)が、時々振り返っては困ったような表情をしてた。なのに、このベーシストはビール飲みながら平気でプレイしてるし…。ま、ある意味ファンキーなプレイヤーには違いなかったけどね(笑)。


肝心のステージのほうだが、アルバムにも入っているミディアムナンバー「Crush」でスタート。よく通るソウルフルな歌声で、CDで聴くより数段力強い。彼が歌いだしただけで会場の雰囲気がガラリと変わるのがわかる。それぐらい存在感のある声を持っている。「スティーヴィー・ワンダーの声を持ったビリー・ジョエル」と言ったらちょっと誉めすぎだろうか。
「Just Friend」(別れたガールフレンドの話で笑いをとってた)「Meaning」とピアノによる曲が続いた後、エレキギターに持ち替えて彼のもう一面でもあるヘヴィな「Chemichal Party」を披露(この曲を聴いてると、やはりグランジ世代のアーティストなんだなと思う)。曲の途中でカントリー系のリズムに変わったかと思ったら、なんとCCRの「Proud Mary」を歌いだした!「Rollin', Rollin', Rollin' On The River」というコーラスもバッチリで、メンバーも楽しそうだ。個人的にはこの日のハイライトのひとつ。
この後も感動的なバラード「More Than Anyone」やツェッペリンのようなヘヴィなリフの「I Don’t Want To Be」(この曲のイントロでベースが思いっきりミスった…)など、緩急織り交ぜたステージを見せてくれた。
ピアノだけのバラードでは、まるでゴスペル歌手のような歌い方で、静まり返った会場の壁を振るわせるぐらいの熱唱をしたかと思うと、R&Rな曲では一転、ハンドマイク片手に体操選手並みのアクションで観客の度肝を抜いていた。
Tシャツ姿になったGavinは、実はかなりの筋肉質で(上半身だけじゃなく、腿の筋肉も盛り上がっていた)、元体操部の娘が「アレはかなりの筋肉バカだね」(娘なりのほめ言葉です)って言ってたが、確かに体操選手のような身体だった。歌のイメージと違って、意外だったけどね。きっと筋トレが趣味なんだろう。


最後は「Follow Through」「Chariot」と続き、アルバム未収録も含め15曲を歌いきった。続くアンコールではGavinひとりがステージに戻ってきて、この日最も情感を込めたバラードを歌い始めた。ガランとしたステージ上でピアノの前に座り、ピンスポットを浴びながら、静かなファルセットで「Hallelujah〜」と繰り返す。その祈りにも似た彼の歌声に会場中が静まり返り、誰もが耳をすましているのがわかる。予定にはなかった曲らしく、おそらくカヴァー曲だが、聴き覚えがあるのに思い出せない*1。んーっ、誰か知ってる人がいたら教えて欲しい。でも、こうゆう余韻の残る終わり方というのもいいものだ。
結局、Gavinだけで75分間ぐらい。ショーケースなので(チケ代も安いし)こんなにやってくれるとは思わなかったから満足度も2倍だった。
ライヴの後、娘は「あんなお調子者のキャラだとは思わんかった。あたしの中ではGavinの印象は変わったよ。もちろん好きなほうに」って言ってました(笑)。

*1:Leonard Cohenの歌でしたね。こんな有名な曲を忘れてたなんて恥ずかしい(^_^;)どちらかというとJeff Buckleyのヴァージョンに近いんじゃないでしょうか。Gavin自身もそれを意識してるような気もします