議員からの質疑1

質疑者:伊藤信太郎議員(自民党)
●「」内の答えは全て依田巽参考人のものです。


Q:映像が入った音楽DVDも、今度の法律のレコードいう範疇に含まれるのか。


●「お答えします。わたくしどもは音楽製作をベースにしておりますが、ただし音楽製作のマスターライセンスの中にはシンクロ権と称しまして映像の権利が入っている場合もございます。したがいまして、それは個々の契約によって違うと思います。以上であります」


Q:具体的なCDの値段の中で、ライセンス料や小売マージン、音楽出版社の取り分などはどういう配分になっているのか。アメリカからの直輸入盤がストップするという懸念が音楽ファンから寄せられているが、CDの値段の中でのライセンス料や小売マージン、音楽出版社の取り分等々は日米の間でどう違うか。日本人のアーティストによる場合と、マスターテープを受け取って日本でプレスしてるアメリカのアーティストの場合の比較を、トップアーティストを例に聞かせて欲しい。


●「レコードにはですね、いわゆるレコード会社が、アメリカのレコード会社から日本のレコード会社がそれをライセンスしましてですね、現地でマスターライセンスをして、日本で生産する国内盤と、それから(日本の)レコード会社がアメリカのレコード会社の製作したレコードをそのまま直輸入で日本の子会社が輸入する、いわゆる洋盤ですね。それからアメリカのレコード会社が、アメリカの市場で販売したレコードを(日本の)流通業者がアメリカの国内で買い付けて日本に流通させる平行輸入盤と3種類あるわけでございますが。このベースになりますのは基本的には、日本ではリテールプライス、小売価格から割り出すところの著作権使用料、あるいは原盤利用料であります。これにつきましては例えば日本の2500円のCDが発売されているとすればですね、その2500円のリテールプライスに対しての著作権使用料6%、あるいはまた一般的にはですね、原盤使用料として私どもは各社マターでございますのでわたくしがここで細かく申し上げることは全く出来ませんが、概算では約30%ぐらいの原盤使用料がですね、2500円のリテールに対して課せられてその分がですね、本国の原盤所有者であるレコード会社に払い込まれるということであります。そして著作権の場合にはこれは6%と申しますのは、あくまでも作詞家、作曲家が製作した音楽のいわゆる録音使用料だけでございます。したがいまして、今、先生が仰っておられる演奏権であるとか放送権であるとか、そういう著作権の他の主文権についてはこの6%はなんら支払いはしておりません。そういうことでございますが、よろしいでしょうか」


Q:音楽業界というのは多くの方の権利関係が複層的になっている。アメリカの場合は相対契約なので、例えばアーティストの力が強い場合はロイヤリティが最大リテールの20%という場合もあるし、もちろん逆のケースもある。メカニカルとかブロードキャストのパーセンテージも個別に異なる。今度の契約で問題になるとすれば、管理契約を結んでる管理会社、音楽出版社、サブパブリッシャーとか、ライセンシーも日本で言うところの著作隣接権者、あるいはアメリカでの著作権者に入るのか。つまりは流通経路、製作プロセスの違いによって、それぞれの権利者の取り分が自ずから異なる。そして自分の取り分の減らされた会社や組織がそのことをもって著作権の侵害と訴える可能性はないのか。それで直輸入、並行輸入が止まるケースがないのかどうかを聞かせて欲しい。


●「大変に重要なご質問で、かつそのへんのご説明を申し上げますとたぶん良くご理解いただけると思うんですが。アメリカのレコード会社は全世界60数億人に向かって作品を作っております。英語で作るわけでございます。したがいまして、アメリカで製作されるCDというのは日本だけを限定したものでは全くありません。全世界です。そしてそのCDが、おびただしいアメリカの国内に流通してるCDの一部が日本に輸出されてくる。これが並行輸入です。いわゆるそういう並行輸入でもですね、アメリカではすでに著作権者に対する著作権使用料はレコード会社が払い込んでありますから。ですからアメリカで流通するレコードの生産数が増えれば増えるほどアメリカの権利者は潤うわけでありますね。そういうことで、今世界に流通しているアメリカのいわゆるCDがメジャーと称して全世界の75%を占めているというのが実情です。ですから日本が、日本のいわゆる国内事情によってですね、世界62億人に向けて作られたCDに『日本輸出禁止』という表示をすることは現実的にあり得るのか、ということなんですね。それは「ない」とみてます。もしもあったとしても、今度はアメリカの元(げん)著作権者等が「なぜそうするんですか」と。「私たちは全世界に向けて作ってる」、もともとアメリカが中心であってもそれは全世界に流れていくことを承知の上で作ってるわけですから。それを日本が日本の国内事情で輸入禁止ということにしますとですね、逆にアメリカサイドから、あるいは欧米の元著作権からクレームを受けることになります。そういう問題が一点ございます。それから今回の還流防止措置についての法的な、著作権法的な主文権でいきますと、これはあくまでも先ほどから申し上げてますが録音印税というかたちでですね、音楽を複製して、それをCDに複製して録音する、その権利についてのみ我々は支払いをしてますから。そういう意味においてはアメリカで流通してるCDは全て、その権利処理を行っていますので。ですから申し上げましたように日本でそれを止めるということはアメリカの著作権者みなさんにとっては不利益ということになるわけでございます。ということでご回答よろしゅうございましょうか」


Q:依田会長のご見解ではそういうことは「ない」と。しかし私の経験上から言っても、アメリカのロイヤー(弁護士)はかなり厳しくて、法的なスキを見つけては自らの利益を獲得するものである。今回日本の法律で還流阻止を行おうとしているが、その副作用として洋盤が止まるかというのが問題になってる。これをアメリカの弁護士が見つけた場合、元著作者との出版管理契約、ライセンス契約そのものはアメリカで行われているはず。その間の係争の一般的準拠法はカリフォルニア・ロウ(法)であったり、裁判管轄権もアメリカになるケースが多い。それらの権利者が訴えた場合、アメリカで裁判をして欲しいと言ってくるだろう。しかし、今回のはあくまで日本の法律なので管轄権は日本にある。契約面もあるだろうが、そのへんの危惧を払拭できる自信について伺いたい。


●「わたくしは日本のレコード協会長を務めると同時にですね、世界のInternational Federation of Phonographic Industry、国際レコード産業連盟の理事もしております。そういう意味ではいわゆる原盤権関係については世界的に支持されております。先週もロンドンのIFPIの中央理事会に出て説明してまいりました。一方ですね日本のJASRACは世界で最大級の著作権使用料管理団体でございまして、JASRACもですねわたくしどもと全く同じ意見を持っております。たとえば、JASRACが海外で行われるそういう会議においてですね、そのへんの説明は随時していただいております。たとえば最近でいえば、BIEM、録音権協会国際事務局という会合がございます。そこでも説明をしていただいたそうでございまして、そこで得たリアクションはですね、「経済的な利益の伴わない権利行使をすることはありえない。このことは録音権協会国際事務局における還流問題の討議の場においてJASRACにより還流防止措置の趣旨を報告し、各国著作権団体も充分理解しているところであります」と、いうことでですね。これはあの、全世界のいわゆるレコード製作者、あるいは著作権団体もですね、ぜひこの措置は必要であるということで理解を得ております。以上であります」


Q:そうするとASCAPやBMIとも話がついてると理解してよいのか。


●「ASCAPにおきましては、これは演奏権でございますので、わたくしども先ほどから申し上げております録音権とは別でございますので。逆に言いますと、この並行輸入盤が止まって日本での市場の、いわゆる存在感が失われることによってのコンサート等に影響がありますから。逆に言えばASCAPもですね、これについては賛同するはずでございます。はい、そういうふうに考えております」


Q:そのへんは書面をもって確認していただきたい。