議員からの質疑2

質疑者:川内博史議員(民主党


Q:今回の法案が著作権者、アーティストにとってどのような影響が出てくると思うか。


●「お答えいたします。7年間というのは、わたくしどもが過去数十年にわたってリリースされたCD、レコードがライフサイクルで何年あるのかという科学的な数値もベースにして作り上げた7年間(という年数)でございます。で、実を申しますと私は50年を主張しておりました。それは著作権著作隣接権は50年であります。なぜその50年の権利を我々は7年まで詰めなければならないのかということについては、はっきり申しまして非常に不満です。しかし、なんとかこの法律をみなさんに理解していただくためにはですね、このへんの、やはり調整は必要であろうということで、ひとつの論拠としてですね、過去発売した作品の平均的なライフタイムを7年というふうに、まぁ作り上げたわけでございます。
それから、先ほど香港とかオーストラリアの話が出ましたが、香港もオーストラリアも輸入大国でありまして、いわゆる洋盤をベースにする、ようするに輸出を目的としたレコード生産国ではありません。日本は第二位のレコード生産大国でありますが、オーストラリアはほとんと自国での生産はございません。輸入だけでございます。(日本とは)状況違います。香港の場合もですね、そういう意味で私は違う論議であると考えておりまして。いずれにしましても7年間はそういう論拠がきちんとございます。以上でございます」


Q:日本もまだ、音楽の輸出国ではないと言えるのでは。現状ではオーストラリア、香港と同じ状況と認識しているからこそ、この法案に対する質疑をさせていただいている。その観点からお尋ねするが、依田会長がレコード協会の会長として仕事をしてる間は欧米からの輸入盤が止まることはないかもしれない。しかし、それは未来に向けて約束されたものとかと問われれば、決してそうとは言えないのではないでしょうか。


●「社団法人日本レコード協会は62年の歴史を持っております。そして、今回このような法律制定でいろいろお願いしているのも初めてでございます。そのなかで4月のレコード協会の理事会におきまして、わたくしはレコード協会会長として、社団法人日本レコード協会の理事の総意でこの問題についての審議をいたしました。そして日本レコード協会としては、そういう将来洋楽が止まることはないという理解であることを議事録にとどめて文化庁に提出いたしております。したがいましてわたくしは一個人ではなく、協会長として、社団法人日本レコード協会が存続する限りにおきましてですね、この議事録は重いと思っております。であるがゆえに付帯決議でですね、もしもわたくしどものとる商活動がですね、今回のこの法律の本旨に基づくものとはかけ離れた場合には、その存廃も含めてのいわゆる決定をですね、立法府の先生方にお任せするというかたちでリスクを背負った。そういう議事録も作っておりますので、ご理解賜りたいと思います。それから先ほどの点でひとつ落としましたが、まず今、この非常に、世界中大変な音楽業界の中でビートルズが40年も前に出したレコードがなぜ今でもきちんと存在して、そしてアルバムとして発売されるんでしょうか。これはやはり著作権であり、著作隣接権がある。これがいわゆる再リリースで出てくるわけでございますから。7年間、一度出したら7年間眠っているわけではございません。そのアーティストはいろいろなかたちでですね、亡くなったアーティストであっても復刻盤として出たりします。ですからそういう意味においては楽曲1曲1曲に瑕疵(かし)があってはならない。以上でございます」


Q:いや、ここは依田会長の意見を聞く場でなく、私の聞いたことにお答えいただきたい。権利行使をしないというメジャーの言葉が将来に渡るまで担保されているものかどうか、ということをお聞きしたつもりだが、今の会長のお答えはレコード協会の議事録は重いというもので、すれ違っている。では言葉を変えてお聞きしましょう。ファイブメジャーの本社の取締役会なり、あるいは社長さん方なりの「権利行使はするつもりはない」という意志の表明は我々は一度も聞いたことも見たこともない。依田会長がそこまで自信を持って仰る根拠を、いつ、どの会社の、どういう立場の方が、どの場でそのようなことを仰られたのか。それは文書としてあるのか、ということをお聞きしたい。


●「まずメジャーファイブの話が出ておりますが、世界には無数のレコード会社がございます。メジャーファイブがほとんどの、75%のビジネスをやっておりますということでメジャーファイブと申し上げてますが。そのメジャーファイブの中にもですね、それぞれの会社の特性がございますが、ほとんどのメジャーは日本の判断に任せますと、これは日本の問題と言うメーカーもございます。あるいは本部のほうで、これについては了解しましたというメーカーもおありのようです。ただそれが取締役会として決議されたかどうかについては私は存じておりません。少なくとも日本レコード協会の理事である、開示者の理事のみなさんの考え方をきちんと整理したところですね、そういうその洋楽の並行輸入を止める、そういうことを依頼するつもりもないし。また本邦においてはですね、現地のライセンサーとしては「止めません」ということを言っておりますということで私どもは一応担保していると考えております」


Q:レコード協会長として依田さんは、メジャーの本社の方々に対して、一社一社確認をとられたわけではないということですか。


●「これは各社のそれぞれの考えがございますので、わたくしのほうから日本のレコード協会長としてそれ(確認)を行うことは出来ません。また、いたしてもおりません。各社の日本の法人のトップが(日本の)レコード協会の理事でございますので、みなさまがたの考えをお聞きし、整理したということでございます」


Q:ファイブメジャーの実際の権利者である本社の意志というのは、確認をしていないことがここではっきりとした。たとえば空き地があって、そこを通っていいか、はたして通れるだろうかと考えた時に、隣りの家の人やその土地の所有者の親戚が「いやぁ、通っていいんじゃないでしょうか」と言ったので通ってみたら、その土地の実際の所有者が後で「そこは通っちゃ行けない土地だった。俺の土地だぞ」というようなケースは充分ありえる。会長の仰ることは、実際の権利者がどう考えているかを確認していないわけで、音楽ファンに対しても不誠実な気がする。
続けて伺うが、ドンキホーテなどのディスカウントストアで売られているアジアからの還流盤。実際の数は少ないが、1500〜1600円ほどで売られています。会長はこれらについては問題にする気はないと、消費者団体との説明会の中で仰った。邦楽については、会長はその権利者であり、権利行使をする決定の権限を持ってらっしゃる。これらドンキホーテなどで売られている邦楽の還流盤について「現状の値段のレベルであれば権利行使をするつもりはない」と言ったことについてはそれでよろしいのか。確認させて下さい。


●「詳細に渡った点についての整理はまだしておりませんが、基本的な考え方を申し上げますと、もしもレコード流通のお店、あるいは一般の小売店でですね販売されているCDに還流品という表示があった場合にはですね、これは還流品として(はっきりしているので)認められないものは認められません。ですから価格によってですね、認める認めないの問題ではないと思います。1500〜1600円という価格がはたしてどういうものなのか。一過性のものなのか、プロモーションのものなのか、ロスリーダーなのか、それはわかりませんし。ですから価格のことで私が一つひとつですねコミットすることはありえないと思います。ただそこで還流品というコーナーの山があって、隣りに正規品があって、そこで大きく権利者の利益を損なうような状態においては、「この還流品は違法です」ということを言わざる得ない。これが見做しだと思ってます。以上です」


Q:再販制度輸入権との二つの保護措置にこれからレコード業界は守られることになるかもしれない。こんな国は世界でただ一つだ。私はどっちか一方だと思うんですよ。再販制度で国内価格の維持を図るのか。それとも外から入ってくるものはシャットアウトして、国内での販売価格は自由にするか。そうでなければ価格競争が全くなくなるわけですから。依田会長、この審議はネットを通して日本中の音楽ファンが聞いていますよ。
この場で「CDに関しては輸入権はどうしても欲しい、だから再販は諦めて手放す」ということをで仰っていただけませんか。


●「そういう返事しなければ答弁できないと困るんですが。はっきり申し上げまして(再販制度輸入権は)二つとも全く違うものでありまして、その必要性について時間の関係もありますんで、端的にご説明申し上げます。再販があっても競争が出来ないんではなくて、再販の中でいくらでも競争が行われています。300円のCDもあります、3000円のものもあります、1500円も1200円も1800円も。ですから、再販があるから価格を高止まりしているんではありません。ただ一定期間のいわゆる小売価格を再販で守って、それによってですね元権にきちんとした対価を払いですね、そして製作者もそれによってコスト計算が出来る。これ世界に稀に見る大変立派な法律だと思っています。これは決してですね我々の産業界のエゴのために存在するんではございません。それによって日本の多くの音楽ファンが、愛好家がですね、たくさんの音楽を楽しんでいるわけです。もしも全て高止まりしているんであれば、これは問題です。実際よくご覧になって下さい。昨年1年間で日本の一番安いCDは300円からで、(これが)3300円までございます。その中で競争しているわけでございます。そりゃ海外のレコードも同じ土俵で競争。かえってフェアでございます。なぜならば同じ値段で売れるか売れないかの競争するわけでございます。売れなければ非再販になったら値段が下がるわけでございますから。
それから輸入権については、レコード還流防止措置についてですね、したがってですね、これは全く違う問題でございまして。日本のレコード産業は今、4560億の産業基盤まで縮小しておりますが、しかし輸入がですね通関統計だと300億、輸出が27億と、こういう数字でございます。輸入が300億で、輸出が27億なんです。ようするに何もしてない、出来ないってことなんですね。で、それを海外に展開しよう、それは決して産業論ではなくて、文化論として。例えば中国の北京に行ってですね、ぜひ今度私どもが展開しております北京の音楽情報センターを訪れてみて下さい。多くの若い中国の子供たちが一生懸命聴いてます。これは大変なやはり文化的な側面をですね、我々は中国政府からも非常に評価いただいておりますし。そういう意味で私どもは決してこの還流防止措置が、日本の業界のエゴのためではなくてですね、海外進出で東南アジアの近隣諸国との善隣外交を深めるという意味においても大変大事な法律でございますので。この再販と還流防止措置を一緒にしないでですね、別途我々は再販についてはひじょーに気をつけてですね、なるべる国民のみなさんに理解を得られるようなかたちで努力しておりますので。ぜひそのへんのご理解を賜りたいと思います」


Q:還流防止も再販の維持も、どちらも独禁法上の適用除外ですから保護政策なんです。二つの制度を別々だと言うのは詭弁だと、これは音楽ファンのみなさんが言ってるわけです。みんなに理解をされる制度でなければどんな制度を作っても、それは意味がない制度になってしまうんだということを私たちは繰り返し繰り返し申し上げてきました。依田会長とはこれからも長いお付き合いをさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます(議長大ウケ→大爆笑)。