議員からの質問5

質疑者:石井郁子議員(日本共産党


Q:文化審議会著作権文化会の報告書によると、日本レコード協会アンケート調査で19社中13社のレコード会社が今回の還流防止措置が実施されれば、アジア諸国に積極的な展開をしたいと言っている。文化振興のために還流防止措置の積極的な意義があると思うが何か意見は。


●「お答えします。今、我々が身近に接している問題として、海賊盤の問題、これは日本のコンテンツビジネスに対して大変な問題になっております。我々音楽セクターだけでなく、あらゆる産業セクターでも非常に大きな問題になってますが、わたくしどもがその海賊盤の生まれてきている大国、例えば中国であるとかその近隣諸国を見てみますと、やはり海賊盤の撲滅でいくら我々が摂取扼腕してもですね、なかなか効果が上がってこない。しかも当該国においては政府もかなり力を入れて、我々の意見を聞いてくれています。事実、いろいろな制度も整備させていますが、海賊盤はなくならない。そのなかで我々がただ手をこまねいているんではなくて、現地に出向いて海賊盤に競合できる価格で生産をし、そして音楽文化を一緒に創り上げていこうとする。その努力をする以外に残された道はない。ということで、少なくとも先ほどの19社中13社というのは、(還流防止措置の実施)あれがすぐに出たいというのがこの数字でありまして。基本的には日本のレコード産業、音楽産業がこの還流防止措置によって担保を得て海外展開をして、海賊盤とのフレンドリーな競合の上で我々の文化産業を、音楽文化を広めていきたい。ということで産業界一丸となってその(法案の)成立を待ち焦がれているということでございます。以上でございます」


Q:私どもにも洋盤CD問題についての意見がいろいろと寄せられていおり、洋楽CDの並行輸入品の存続を望む有権者有志一同による、著作権改正法案の修正のお願いという文書が届いている。その内容には「日本レコード協会が傘下のレコード会社をして関連のメジャーレーベルに輸入権を行使させないことを約束しても、米英の作詞家、作曲家、実演家が並行輸入を阻止するために輸入権を行使すれば洋楽CDの並行輸入は許されないことになる。これでは文化庁レコード輸入権を創設しても何ら影響はない。数少ない拠り所である日本レコード協会の念書はその意味を失うのでないかのか」というものがある。こういう意見に対してレコード協会はどのような見解を持っており、さらにどう対応されるのか。


●「お答えします。先ほど申し上げたと思うんですけども、音楽産業は非常に裾野の広い数多くの権利者が関わっております。ですから、みなさんが異口同音に100%法律等の理解が出来るかどうかについては、まだ定かではない点がございますが。であるがゆえに、RIAAであるとかRIAJが業界全体の総意としての取りまとめをしているということであります。なお、わたくしども著作隣接権者であるレコード業界がこの法律を施行された後ですね、一部の、他の権利者が反対すれば(並行輸入が)止まるんではという話でございますが、そうあったとしても我々としては「それは違うんだ」ということをRIAAにも申し上げますし、RIAJとしてもきちんとしたスタンスはもう決まってます。もしもそれで、この法律が施行後そういう不都合が起きた時には、そこで付帯決議が有効になるわけでございますから。今この世の中において一般の消費者の理解を得ることが出来ないビジネスはあり得ない。皆様方、先生方もよくご存知の通り、昨今は一つの過ちでも即座にインターネットで(意見や反論が)寄せられる時代でございますから。そんな、業界として決められた法律にきちんと準拠しないビジネス活動はあり得ませんし、その時にはもう、きちんとした判断にわたくしどもは従います。ということで、これは最大の担保であるというふうに思っております。以上であります」


Q:繰り返しの指摘になるが、日本レコード協会としては、ファイブメジャー各社側から文書のかたちで確約を得ていないという問題がある。メジャーの経営者は誰一人としてそのような表明は行ってない。本当に洋楽CDの輸入を阻止する意志がないのであれば、メジャーの経営者自身が直接その旨を表明して洋楽ファンの疑念を晴らすのが合理的なのに、そのような行動が一切とられてないのはなぜなのか。


●「ファイブメジャーが非常に大きな力を持ちますアメリカにおいて、即ちアメリカは法律、契約の社会であります。そのアメリカの企業と我々民間の団体がですね、契約を結ぶことによって法律的に担保されるとは私は思っておりません。これはあくまで商取引上の契約でございますから。したがいまして、そこで念書をとったとしても、何かの理由でその念書を維持出来なくなるような事態が起これば、やはりそこでまた問題になるわけですから。いずれにしましても、念書をとったから、契約書をとったから未来永劫にこの問題は解決というわけにはいかない。そういう考えも私はあると思ってます。したがいましてそれよりも、そういったいろいろな状況を想定される中において、世界のレコード産業をほとんどカバーしているアメリカのレコード協会RIAAと、RIAJが善意のグッドフェイスに基づく取り決めと言うか理解があれば、これで充分であって。しかもですね、一対一の、一企業と一団体が結んだ契約ということになりますと、アメリカの全レコード会社と契約を結ばなければ価値がありません。そういうことが出来るでしょうか。したがって、その総意を代弁するのがRIAAでありますから。「一社一社その契約を結びましたか」と言われるんであれば、メジャーであってもそれは100%保障されません。全アメリカのレコード会社と契約することは不可能でありますから。そのへんについてのご理解をいただければと思います」


Q:(高橋氏による、輸入業者にかかるプレッシャーの大きさ、法文にある以上の影響力、その結果輸入権行使がなくても輸入盤が止まるという状況が起こりうる可能性を含んだ法案であることが説明されたことを受けて)
現実的に並行輸入が止められるという事態が起こり得るのか。


●「お答えします。反対するためにはどういう論拠でもスタートできますから。ですから「反対である」「それはこのような理由である」という理由はいくらでもつきます。しかしですねレコード会社が、アーティストが自分の作品を少しでも多く売ろうとしている時にですね「日本発売禁止」などと書く人が(レコード会社に)いるとすれば、この法律の有無に関わらずそういう人は(そのアーティストのレコードを)売りたくない人なわけですから。それは普通あり得ないことなんですね。先ほどから申し上げてるようにどこの国でもいいです、メジャーでなくても結構です。どこかの当該国において、これは日本で少しでもたくさん売りたいからそこで止めてしおうと。そこで(「日本発売禁止」の)シールを貼った場合にですね、その商品が止まったとしても、しかしその当該国にはたくさんのディストリビューターがいるわけです。そこから買って日本に輸出すればいいわけですよ。ですからAというレコード会社がAという国で、日本には100%売らないということであるとすれば、これは(シールを)貼るでしょう。その場合には残念ながら買えませんが、しかしその国が隣の国で売っているものがあるとすればこっち(日本)に入ってきますね。ですから、我々が「意識的に止める」ってことが出来ないことなんです。で、その出来ないことを「出来る、だから反対」と言われてもなかなか論理が噛みあわないところが今回の最大の問題でありまして。もうひとつ突っ込みますと、著作権といういうのは内外無差別なんです。これが全てでございまして、したがって私どもはこういうひじょーに悩ましい説明をずっと言い続けてきておるわけですが。で、わたくしは総論で申し上げますと、そういうことはまず起こらないことだろうと申し上げることが出来ると思います。


Q:そのへんの議論が噛みあってないと私も思う。明日の審議にも活かしたい。
(この後、弘兼憲史参考人への短い質疑を挟み)
本日は社会生活に深く関わる、音楽文化、活字文化についての貴重なご意見ありがとうございました。


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