独自の世界観

密閉されたエレベーターの中での惨劇というと、おそらく『CUBE』のナタリ監督の短編『ELEVATED』を連想する人も多いかと思う。その部分は、きっと山口監督も意識してるんだろうが、決定的に違うのは『グシャビン』におけるエレベーター〝移動機筒〟は、あくまで藤崎ルキノの能力を解き放つための導火線であり、言い換えれば彼女の精神世界の一部分のような存在だということ。


エレベーターでの出来事はルキノの精神感応能力が引き起こした幻覚であって、それにより彼女自身が暴走してしまったのか?そもそもあの世界自体がが彼女による想像の産物だったのか?
虚構と現実が入り混じり、サイドストーリーが幾層にも張り巡らされて、心理サスペンスの要素も併せ持ったオリジナリティ溢れる世界観。この作品の最大の魅力は、観た者それぞれがいく通りもの解釈ができることであり、主人公ルキノ同様に、深層心理に入り込み、われわれの眠っていた想像力を掻き立ててくれる。